【1人じゃ生きてけない?】動くことすらままならない慢性疲労症候群

慢性疲労症候群・筋痛性脳脊髄炎(CFS/ME)
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前回の記事「慢性疲労症候群を知るはじめの1冊」では慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎がどんな症状なのかご紹介しました。今回の記事では、どれぐらい動けないのか、厚生労働省が精査した平成26 年度「慢性疲労症候群患者の日常生活困難度調査事業」の実態調査書から紐解いていきます。「PS値」など専門的な用語が出てきますが、知らなくて当然です。なぜなら医者や医療従事者ですら、日本ではまだ認知されてない用語なのですから。悲しい現実です。

診断で重要なPS値

診断ではPS値が0~5(軽症)、6~7(中等度)、8~9(重症)の3群に分けられます。

日常生活や労働等のパフォーマンスステータス (PS値)
0: 倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1: 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、倦怠感を感ずるときがしばしばある。
2: 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠の為、しばしば休息が必要である。
3: 全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
4: 全身倦怠の為、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
5: 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6: 調子のよい日は軽作業可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。
7: 身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、通常の社会生活や軽作業は不可能である。
8: 身の回りのある程度のことはできるがしばしば介助が要り、日中の50%以上は就床している。
9: 身の回りのことはできず、常に介助が要り、終日就床を必要としている。

慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎を発症時の平均 PS 値は 7.1、調査時の平均 PS 値は 6.0。調査対象患者のうち軽症群(PS 値 5 以下)が 31.5%、中等症群(PS 値 6~7)が 35.1%、重症(PS 値 8~9)が 30.2%でした(n=248名)。

患者は体調が良い時だけしか受診できず、医師は体調が悪い時の患者の状態を見ることはできないにも関わらず、患者申告による調査時の平均 PS 値は 6.0 で、主治医情報による現在の平均 PS 値は、5.6(ただし、主治医からの回答データ分のみの平均)と、著しい乖離はありません。

重症患者(PS 値分類) は全体の 30%

調査時の PS 値が 8 の患者は 248 名中 55 名(22.2%)、PS 値 9 の患者は 248 名 20 名(8.0%)で、PS 値 8~9 の重症者は全体の約 30%に当たることがわかりました。国際 ME/CFS 学会は、患者の約 25%は寝たきりもしくはそれに近い重症患者であると発表しています。今回の調査では、通院困難な重症患者を含めて、中症~重症患者への電話・訪問聞き取りによる調査を実施。これらの重症患者の発症時 PS 値は 6 が 3 名、7 が 4 名、8 が 50 名、9 が 18 名で、発症後に PS 値の悪化(PS 値 6~7 から 8~9 へ)を認めた患者が約 1 割存在しています。

慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の患者の家事は誰がやるの?

慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の患者は、動くことがままなりません。そうなると日常生活に欠かせない家事が問題となってきます。家事のできない場合に誰にやってもらっているかを調査したところ、母との回答が61件(53.0%)、配偶者が39件(33.9%)であり、家族のサポートを受けている患者が大半でした。

慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎である患者のADL・QOLの維持のためには、家事ができない場合は家族が負担しており、家族の支援が必須な状況である。家族の支援が支援する割合が高かった理由として、今回の調査に参加された患者の現在の平均年齢は約40歳と比較的若く、家族の支援を受けることが可能な者が多かったことが考えられます。高齢化社会に伴い、今後はヘルパーや公的介助が生活を支えるかなめとなるでしょう。

医療機関や病院に1人で通院できる?

この質問に回答した患者は 186 名(平均 PS 値:5.5)。うち、26 名は家族またはヘルパー付き添いを要していた。実際に、1人で公共機関により通院できるのは 73 名(平均 PS 値 4.9)であった。1人で通院できるとした患者においても、車椅子やタクシーを利用し、実際は付き添いを要し、小まめに休養しながら通院している患者が多かった。

通院状況(交通手段等による分類・人数 平均 PS 値
一人で公共機関 (74 名) 平均 PS:4.9
送ってもらう (64 名) 平均 PS:6.9
自分で車運転 (56 名) 平均 PS:4.6
タクシー (43 名) 平均 PS:7.4
休み休み公共機関で通院 (39 名) 平均 PS:6.3
その他 (23 名) 平均 PS:6.5
車椅子押してもらう (21 名) 平均 PS:7.4
近所の医療機関に一人で通院できない (17 名) 平均 PS:7.3
横になれる車椅子 (8 名) 平均 PS:8.6
電動車椅子 (4 名) 平均 PS: 8.0

車を運転して通院する患者には、長時間歩けず、車でなければ通院できない患者もいます。また、交通機関利用や車運転で通院できる患者の PS 値は 5 未満であったのに対して、1人で通院できない患者は 59 名おり、より重症な傾向であった(平均 PS 値:7.4)。これらの患者は通院時に家族(母、夫、子供)・ヘルパーのサポートを要していた。

車椅子・電動車椅子利用者は PS 値 8 強と高値を示し、重症患者においては電動車椅子や横になれる車椅子等を用いることで、なんとか通院している現状にあることがわかりました。

現在、「往診」、「通院していない」、「今はできない」、または「家人に薬を頼む」と回答した医療機関に通院すらできていない患者は 15 名で、PS 値 7(3 名)、PS 値 8(10名)、PS 値 9(2 名)、平均 PS 値 8 と重症例に多かった。一人で通院できない場合の付き添いでは母が 29 件、配偶者が 24 件であった。

通院時の付き添い状況 度数(n=65) 割合(%)
29 44.6%
配偶者 24 36.9%
ヘルパー 8 12.3%
子供 7 10.8%
9.2%
兄弟 1.5%
合計 75 115.4%

通院後は寝込んでしまう慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の患者

患者全体解析では、通院後に寝込む患者が 76.7%(184 名)存在し、最短でも 0.5~1日、通常数日~数週間(平均 8 日)、最長 4 か月寝込むことが明らかとなった。一度通院した後に(通院以外の)外出がほとんどできない(40.2%)・全くできない患者(6.6%)は、全体の 5 割弱(46.8%)に上ることが明らかとなった。外出後に寝込む患者の平均 PS 値は 6.5 で、寝込まない患者(56 名)の PS 値は 4.2 に比べて有意に高かった(P< 0.05)。

今後必要なのは手が届く助け

これまでのデータを見てくると、1人で動くことがままならない現状が慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の患者にはありことがわかります。動けたとしてもその後寝込んでしまい、日常生活がままなりません。
近くに介助してくれる人がいればどうにかなりますが、一人暮らしではそれも無理な話。ヘルパーや公的な助けが必要となってきます。また、近くで支える人たちの負担も心配になります。家族内だけで助け合うのではなく、宅食を使ったり、電動車いすを導入するなど負担を減らすことも考えていかなければ、患者とともに家族も共倒れになってしまいます。日本でも早くこの 慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎 が難病指定となり、手厚い看護を受けられるようになることを願っています。

萩原崇(@t_panda123
【併せて読みたい】慢性疲労症候群を知るはじめの1冊
【併せて読みたい】【名前からくる誤解】慢性疲労症候群から筋痛性脳脊髄炎へ

コメント

  1. […] 萩原崇(@t_panda123)【併せて読みたい】【1人じゃ生きてけない?】動くことすらままならない慢性疲労症候群【併せて読みたい】【名前からくる誤解】慢性疲労症候群から筋痛性脳脊髄炎へ […]

  2. […] この慢性疲労症候群・筋痛性脳脊髄炎が認知されることは患者さんのためだけではありません。周りで介護している人々の苦労を取り除くことにも繋がります。ヘルパーや公的介助、電動車いすの導入などが早めにできれば、介助者の苦労も少なくすることができます。患者、そして介護者のためにも日本でできるだけ早くこの病気の認知がされることを願います。 萩原崇(@t_panda123) 【併せて読みたい】慢性疲労症候群を知るはじめの1冊 【併せて読みたい】【1人じゃ生きてけない?】動くことすらままならない慢性疲労症候群 […]

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