「疲労」という言葉が入ることから、ただの疲れと誤解されがちな慢性疲労症候群。この病気の疲労は、動くことすらできないぐらい状態が6ヶ月以上続いた状態の症状を表しています。そして、病名からあらぬ誤解を受けることもしばしば。そこで日本でも「筋痛性脳脊髄炎」という病名に変更してはどうかという話が出てきています。
慢性疲労症候群の名前の歴史

いわゆる「慢性疲労」とは違い、原因の分からない極度の疲労感が、長期間続く病気です。診断基準ができたのが1988年と比較的遅く、1990年代ごろから、日本でも国際診断基準に基づく症例が報告され、現在も患者数が増え続けています。
筋痛性脳脊髄炎(ME)という病名は1938年から医療文献に記されています。1988年に、イギリス衛生省・英国医療協会により、公的にMEを真に存在する・重症の病気であるとされました。イギリス・カナダ等では、CFS(慢性疲労症候群)よりME(筋痛性脳脊髄炎)という呼称が利用されています。
日本でもCFSの呼び名(病名)についても診断基準検討委員会において1年間かけて検討されました。その結果、CFSというこれまでの病名は疲労という誰もが日常生活で経験している症状を病名として用いていることにより誤解や偏見を受ける可能性が高く、この問題点を早急に解消する必要性が指摘されました。そして、世界中の多くの医学会誌で用いられているME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)を用いることとなりました。
軽症者から重症者まで36万人

日本では人口の0.3%にあたる約36万人が ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群) を罹患していると推定されています。しかし、認知度の低さにより、適切な診断を受けていないか、うつ病・神経症・更年期障害・自律神経失調症等に誤診されている患者が多いと思われる。
20代から50代のうちに発症するケースが多く、患者全体のうち女性が6~7割程度を占め、アレルギー疾患を併発するME/CFS患者が多いと言われている。
症状
免疫系、神経系、内分泌系の多系統の病態が関与するため症状は多岐に渡るが、国際的合意に基づく診断基準ではカテゴリーとして4つに分けられる。
A. 労作後の神経免疫系の極度の消耗(必須)
B. 神経系機能障害
C. 免疫系・胃腸器系・泌尿生殖器系の機能障害
D. エネルギー産生/輸送の機能障害
日本で認められない慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎

1900年代前半には内科的な病気である可能性が高いと思われていました。しかし、当時の診断技術では患者特有の異常が見つからず、精神疾患だと医療従事者の中でも思われるようになっていました。CFS/ME患者は、心の中の問題だけにされてしまう傾向がある。
本来なら神経内科医が診る疾病であるが、仮病や心気症的な振る舞い(注意をひいている)・時には詐病とまでされ精神科にまわされることが多く、診察を拒否する医師さえいるので、患者は診断を受けるために長期の時間苦しむことになり、病気を難治化・長期化してしまっています。
また、多くの患者は働くこともできず、障害年金も受給されないことが多く、経済的に困窮することになる。周囲の人々から理解を得られにくく、怠けている・精神的に問題があるなどとされる傾向がある。
少しづつの認知

2018/10/19 に「社会から理解されず、見過ごされ ――「慢性疲労症候群」患者の切実な声」としてYahoo!で特集が組まれました。この病気が医師にも社会的にも理解してもらえない難しさ。しかし、メディアが少しづつ取り上げるようになり、認知が広まるようになってきました。
「慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎」に対する知識や理解はなぜ進まないのでしょうか。
理由の一つは、血液検査やCTスキャンなど一般的な精密検査をしても異常が見つからない点にあります。病理検査の数値や画像解析では、この病気を判定できないことに理由があります。
したがって、日本では現在も「強い倦怠感を伴う日常活動能力の低下」「活動後の強い疲労」「認知機能の障害」といった6項目の特徴を見極めて診断するほかない。しかも、ストレスや心因性要因で生じる重度の「うつ症状」と酷似していることなどから、診断は難しい状態にあります。
「身体障害者手帳」「 障害年金 」の取得の難しさ

症状が比較的重く、障害者手帳の申請書類を書いてくださる先生をお探しの方は、鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)の澤田石 順先生にメールしてみてください。
E-mail jsawa@nifty.com
慢性疲労症候群の患者にとっては、まず動くことが難しい。身障者手帳の取得によって医療費助成などの支援を受けることができるかどうかは、大きな問題です。しかし、そこにも壁が立ちふさがっています。 手帳の交付は本来、病名で判断するのではなく、障害の程度によって認定するものです 。しかし、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎という病名を聞いただけで、拒否されてしまう場合があるようです。その中で 鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)の澤田石 順先生 は多くの意見書を書き、これまで 患者60人以上に意見書を出してきました。
社会保険労務士の安部敬太 氏も「全国の保健所や関係機関に【ゆらりさん著/慢性疲労症候群の新刊本】を届けよう!」で次のように述べています。
「 まだまだこの病気が身体障害者手帳や障害年金の対象となることが知られていないなかで、ますば、患者本人や周囲の人たちが、この病気による障害(日常生活や社会生活に相当の制限を受ける状態)が、社会保障の対象となることを知ることから始めていかなくてはなりません。 (中略)この病気では、障害者手帳も、障害年金も、請求のための診断書を書いてくれる医師を探すことがとても難しいです。障害年金については、この病気で最初に受診した日(初診日)がいつなのかを証明する必要があり、それによって受給できるかどうかが決まります。」
日本でもできるだけ早い慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の認知を

この慢性疲労症候群・筋痛性脳脊髄炎が認知されることは患者さんのためだけではありません。周りで介護している人々の苦労を取り除くことにも繋がります。ヘルパーや公的介助、電動車いすの導入などが早めにできれば、介助者の苦労も少なくすることができます。患者、そして介護者のためにも日本でできるだけ早くこの病気の認知がされることを願います。
萩原崇(@t_panda123)
【併せて読みたい】慢性疲労症候群を知るはじめの1冊
【併せて読みたい】【1人じゃ生きてけない?】動くことすらままならない慢性疲労症候群
コメント
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